Aave v3でレンディングはどう変わるか?

WebページとNFT

アメリカで人気のTim Ferrisがやっているポッドキャストがあります。今回ゲストが a16zのChris Dixonと、Angelist創業者のNaval Ravikant氏だったので聞きましたが、NFTやクリプトについての話が面白いので、おすすめです。

その中で良いと思った表現は、NFTを『Webページ』にたとえて説明している点です。該当部分を少し抜粋してみましょう。

・・・

Chris「私はNFTを、ウェブページと同じくらい一般的な概念だと考えています。ウェブページについて考えてみましょう。最初に登場したとき、人々は「ウェブサイトだ!」と思い、それをオフラインの世界にマッピングしようとしました。例えばパンフレットのような使い方です。しかし、この30年間に見てきたように、賢い人たちがやってきて、それを革新していきます。ウェブサイト?それはもうただウェブサイトではなく、ソーシャルネットワークになり、SAASツールになりました。NFTも同じように幅広いものになるでしょう。」

・・・中略・・・

Naval「ウェブページという例はいいですね。ウェブページはプログラム可能なので、何でもできます。どんなコードでも実行できます。NFTもプログラム可能なオブジェクトが、とつぜん希少価値を持ち、所有でき、譲渡でき、現実世界とリンクでき、スマートコントラクトを通じてデジタル世界とリンクできるのです。ソーシャルコントラクトによって現実世界とリンクさせることもできます。」

※ソーシャルコントラクトとは、「人々の暗黙の合意」という意味で使われています。

・・・中略・・・

Naval「ウェブページと同じようにNFTでも何でもプログラム可能です。だから、NFTで何ができるかという話をするのは、ちょっとおかしいかもしれません。ウェブページでできることはNFTでも何でもできますし、その上、希少性や所有権、割り当て、権利などを関連付けることもできます。これはとても大きなことです。」

・・・

Webページが「ホームページ」として、単なるプロフィール紹介にすぎなかった時代から、ソーシャルメディアやSaasなど様々なことができる時代となりました。

現在NFTは、この前者の時代にあり、アバターやプロフィールに使う時代から、まだ誰も想像できないユースケースに広がっていくのだろうと思います。そしてそれらのユースケースの多くは、これまでの世界にNFTを組み込むというよりは、DAOやDeFiといったクリプトネイティブな利用の仕方になるのだと思います。

 

■ Last Week in Crypto

1.Introducing Aave V3 - Governance

レンディング大手のAaveがまもなくv3をリリースするために、投票が行われています。ほぼ100%がYesに投票しているので問題なく通ると思います。クロスチェーン、資産の効率化、リスク管理が主な目的となりますが、新機能について大きく3つ説明していきます。

1. ポータル

「ポータル」という機能です。Aaveに供給した流動性を、違うブロックチェーンに移動できる機能で、L1/L2の間を移動することもできるようになります。

仕組みとしては、資産を供給している証であるaTokenをバーンして移動先で再度ミントします。同時に原資産は、Hop、Connext、Anyswap、xPollinate などを使ってチェーンを移動させます。

2. 高効率モード(High Efficiency Mode = eMode)

資産を4つのパラメータに基づいて分類します。

例えば、

  • ETH, stETH, alETHが同じカテゴリ
  • wBTC, renBTCが同じカテゴリ
  • USDT, DAI, USDCが同じカテゴリ

となります。そして、あるカテゴリーの資産を供給しているユーザーは、同じカテゴリー内の資産であれば、より高い担保係数(つまり多く借りられる)と、より低い清算ペナルティで借りられるようになります。

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例えば、「ETHを供給してstETHを借りる」場合に、通常より多くを借りることができ清算ペナルティも下がる、となり、資産効率が高くなることが期待されます。

3. 分離モード

新トークンが担保として選ばれるときに、リスクを抑える方法として、分離モードでリストすることができるようになります。どういうことか、見ていきましょう。

この「分離モード」にあるトークンを担保にすると、ステーブルコインだけを借り入れができます。そしてこの分離モードのトークンを預けたユーザーは、他の資産を担保に別の資産を借り入れることはできません。

例えば、下の図のように、「チャドが、Token2という分離モードのトークンを預けた場合に、借りられるのはUSDC, USDT, DAIだけ($10Mまで)」となり、他のトークンを担保にしたとしてもUSDC, USDT, DAI以外のトークンは借りることができません。

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※このステーブルコインの種類と、借りられる金額の上限は、ガバナンスによって設定されます。また他に供給したトークンは担保にならないだけで、供給による利回りは得ることができる設計です。

許可なしに何でもトークンを扱えるレンディング・プール『Fuse』について以前かきましたが、それと似たようなモチベーションで、Aaveも同じようにマイナーなトークンのサポートを進めていくことになります(まだ許可なしにリストできる、とまではいきませんが)。

今後 Fuse, Euler, Timeswap, Silo が許可なしの分離プールによるレンディング・プロトコルとして競争し始めますが、Aaveのシェアがどう変化していくのか注目です。

 

 

2.Someone took out a $1.4 million loan with an NFT as collateral

NFTを担保にしたローンが増えていて、先週、過去最大のNFT担保レンディングが行われました。

NFTfi を使って$1.4Mドルのローンが発行され、条件は30日、金利9.69%となっています。そして借りたお金を返済しないと担保のNFTを取られる、という条件でお金を借り入れています。

貸す側としては、返済がなかった場合にNFTを得ることができます。実際に以前ある人は、3.5ETH(当時 約80万円)を貸し出し、返済されなかったために担保である$340,000ドル(約4000万円)相当のNFTを受け取りました。このとき担保となっていたNFTは「Elevated Deconstructions」というNFTです。

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画像:「Elevated Deconstructions」NFT

今回の$1.4Mドルの貸し出しの担保になったNFTは『Autoglyph』です。これはアルゴリズムが生成するアート、いわゆるジェネレーティブアートですが、必要なデータはすべてEthereum上に保存されているという特徴をもっています。

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画像:「Autoglyph #488」NFT

 

 

3.WeMeta announces $1.1m funding round to help users buy, sell & build in the Metaverse

メタバースの土地NFTを売買できるマーケットプレイス WeMeta は、$1.1Mを調達しました。

Delphi Digital、DeFi Alliance、Digital Currency Group、Hashed、などが参加しています。

WeMetaはメタバースの土地アグリゲータ、かつ分析プラットフォームで、ユーザは土地を売買することができます。今回調達した資金を使って、マルチチェーンのマーケットプレイス開発を続け、ツールも増やしていく計画です。

WeMetaの機能

売買の機能だけでなく、土地の分析やビジュアル、メタバースの地図などが表示されるようになっています。さらに価格予測やサマリーなどあり、リーダーボードもついています。

こういった製品をみると、NFTマーケットプレイスが分野ごとに特化していくようになる可能性が高いと思ってます。

 

 

4.NFT digital land platform Upland raises $18 million

NFTのデジタル不動産取引ゲーム「Upland」は、Animoca Brandsがリードで$18Mドルを調達しました。

このゲームは、現実世界の住所にリンクしたデジタル不動産を売買するもので、すでに10万人以上の人がデジタル不動産を持って参加しています。

現在は、ニューヨークやサンフランシスコなどの都市の住所に関連付けられた仮想の土地を販売するというフェーズですが、今後その上でビジネスを展開できるように開発をしています。

また将来的には、他のブロックチェーンからNFTをインポートして、メタバースで使用できるようにする機能もローンチ予定になっています。これによって、NFTでアートギャラリーをしたり、カーレースに参加したりといったことが可能になります。 

 

 

5.ENS DAO: Call For Delegates — Mirror

ENSがトークンを発行し、DAOとして運営していくことを発表しました。いくつか人間の裁量が必要なものがあるため、それらを分散化させるためにDAOを作成します。

まず最初の動きとして、以下の権限をDAOが受け取るかどうか、$ENSトークンの保有者が投票します。

  • DAOは、.ethの価格設定やプライスオラクルなど、パラメータをガバナンスする
  • DAOは、既存のトレジャリー資金を管理し、将来の収益も受け取る

DAOはケイマン諸島に「The ENS Foundation」という組織を設立しています。この財団の定款で、取締役の選任・解任や、財団の行動を指示する権利をトークン保有者に与えています。

ENS憲法

$ENSトークンを受け取る人は、提案されているENS憲法に投票します。これは、ENSをどのようにガバナンスされるべきかについてのルールになっていて、可決ためには、全投票の67%の承認が必要になっています。

憲法はDAOによって改正することができますが、その際も67%の承認(総トークン数の5%の定足数)が必要というルールになるそうです。

ENSトークンの配布

ENSトークンの分配は以下の通りです。

  • 25%を.ETH保有者にエアドロップ(137,000以上のアカウント)
  • 25%をENS貢献者に分配
  • 50%をDAOコミュニティトレジャリーに分配
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エアドロップはドメインの登録者、または登録者であったすべてのアドレスに配布されます。2021年10月31日時点での、アドレス登録の合計時間(将来分も含む)に基づいて計算されます。またプライマリENSネームが設定されている場合は、この合計に2をかけます。

ちなみに、あるアドレスが複数のENSを持っている場合でも、1アカウントとしてカウントされます。

コア貢献者とローンチ・アドバイザーに割り当てられたトークンは、4年間のロックアップとなっていますが、VCなどの投資家はいないため、投資家に割り当てられるトークンはありません。

 

 

6.International Cricket NFTs to Hit Flow Blockchain Following $17M Seed Round

Fazeが$17.4Mドルのシード資金を調達しました。

クリプト以外で有名なVCのTiger Globalがリードし、Dapper Labs、Sequoia Capital India、Samsung Nextなども出資しています。

そしてFazeは、国際クリケット評議会(ICC)との提携を発表し、Flowブロックチェーン上にクリケットのNFT市場を立ち上げることを明らかにしました。

NBA Top Shotのように現在と歴史的な瞬間を組み合わせるそうです。また、NFTでのバトルなど Play-to-Earnの環境も開発しているそうです。

 

 

7.Nyan Heroes Raises 2.5M in Seed Round Funding To Disrupt the Play-2-Earn Ecosystem

Nyan Heroesが、$2.5Mドルの資金調達をしたことを発表しました。

Three Arrows Capital、Mechanism Capital、DeFiance Capitalがリードし、Sino Global CapitalやSolana Venturesなどが参加しています。

Nyan Heroes

Nyan Heroesは、Solana上のバトルロイヤルです。最近NFTプレセールを完了していて、残りのパブリックセールは、11月8日にFair Launch Protocolを用いて行われます。

収益の一部は、チャリティパートナーの Best Friends Animal Society に寄付され、1Nyanにつき1匹の猫が救われます。

残りの売上は、調達したシード資金と合わせて、「フォートナイト」などのゲームに対抗する主力ゲーム「Nyan Heroes」の開発を加速させるために使われます。そして今後4-6ヶ月以内にMVPデモを公開する計画になっています。

 

 

8.Spruce Raises $7.5 million to Scale Decentralized Identity and Storage

分散型アイデンティティのSpruceは、Ethereal VenturesとElectric Capitalがリードで$7.5Mを調達しました。Alameda Research、Coinbase Ventures、BITKRAFT、A. Capital Ventures、Protocol Labs、Gemini Frontier Fundも参加しています。

Spruceの創業者は元ConsenSysの人たちです。プロダクトは、『SpruceIDツールキット』という分散型アイデンティティのためのツールと、『Kepler』という個人が管理できるストレージの2つです。この2つは、ブロックチェーン間で連携して、例えばNFTの所有権によるアクセスのゲートや、DAOのために個人認証をすることができます。

・SpruceID ツールキット

ブロックチェーンのアカウントが、オフチェーンのリソースにアクセスするために署名したり、認証情報を発行したりするなどができます。

・Kepler

ユーザーがウォレットを使って、自身でデータを管理・保存して、他者と共有することができます。例えば、Sign-In with Ethereum (Ethereumを使ったサインイン)を進めたり、「パブリックプロファイルはENS上に、プライベートなデータ保管はKepler上に」といった使い方もできます。

 

 

9.Three Arrows Capital Backs $10M Raise for DeFi on Cardano

CardanoのDeFiプロトコルであるArdanaが$10Mを調達しました。トークンによる調達で、このラウンドは、Three Arrows Capital、CardanoのcFund、Ascensive Assetsがリードし、Morningstar Ventures、Mechanism Capitalが参加しました。

「MakerDAO + Curve」をCardano上で作っているといえます。ユーザーは担保を預けて資産ベースの安定コインであるdUSDを発行することができ、色々なステーブルコイン間をスワップできるAMMが設置される予定です。

リリースは2021年Q4を目標としていて、将来的には、米ドル以外の法定通貨にペグするステーブルコインも発行できるようになる計画だそうです。

Three Arrows CapitalがCardanoのプロジェクトに投資するとは意外でした。おそらくCardanoの中では初めての大型の調達かと思います。

 

 

10.Coinbase is testing a subscription service with zero trading fees and prioritized support

Coinbaseは、「Coinbase One」という新しいサブスクのサービスをテストしているそうです。特典として、手数料無料の取引や、休日や週末でも優先的に電話サポートを受けることができるそうです。

記事によると、アカウント保護機能の追加も予定していて、「アカウントの乗っ取りにより盗まれた場合は、最大$1Mドルの損失の払い戻しを受けることができる」という予定のようです。

 

 

11.$UXP IDO

以前すこし触れたステーブルコインUXDですが、11月12日から2日間かけてIDOを実施するという記事です。

Solana上でのIDOの詳細をこれまで見ていなかったので、今回勉強になりました。日本語版もあるので、ぜひ読んでみてください。

一般的な IDO について

IDO(Initial Dex Offering)は、トークンをDEXに最初にリスティングさせるイベントのことで、トークン配布の手法として利用されています。

自分が見ていた限りでは、UMAのUniswapリスティングが、最初のIDOだったと思います。その後、早押しによる参加だけでなく、抽選などのいろいろな方法が試されています。

中でも、公平に参加できる機会がある手法としては、

  • Balancer上のLBP
  • Sushi Miso上のダッチオークション
  • Mesa DEX(Gnosisプロトコルを使ったDEX)上のバッチオークション

などが、ボラティリティが低く、優れていると感じています。設定する価格次第で賛否はあると思いますが、長期的にみたときに適切な人たちに配布がされます。

SolanaでのIDO

今回勉強になった点として、Solana上のIDOで「参加者は期間中に資金をいれ、その後の猶予期間で、状況を見てやめたい場合には出金ができる」という方式のIDOがあります。

デリバティブDEXのMangoがこの方法で実施し、Parrot、Aurory、Solendなども同様の手法でIDOを実施したそうです。今回 UXD Protocol のIDOもほとんどこれと同じ方法ですが、48時間の期間中は、入金も出金もできるようにしています。

上記のような方法については「VCにより見せ玉が投入され、セール終了間際にそれらが引き出され、価格を操作できる」という批判もあるそうですが、2-4年のロック期間が前提のVCがそのようなことをして、長期的な価値を下げるインセンティブはないので、実際そうされているとは思えません。

また公平に参加できる機会があるという意味では、LBPなどと同じように良い配布手法だと思います。


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